2008年9月14日日曜日

クレーの絵に見る線と色彩の調和


「芸術は目に見えるものを再現することではなく見えるようにするものである。」


 この絵も感性だけで描いているように見えますが、それほど単純ではありません。以前、クレーの日記の紹介をしましたが、視覚的な表現を理論的に精錬していく過程が生み出すもの(計算された感覚)なのです。 

 作品の時代背景 ヒットラーの政権化のドイツにあって、政治的に危険と思われたクレーのアトリエは捜索を受けたり、晩年に訪れる皮膚硬化症(進行性で命にも関わる病)の発症、そして、ドイツからスイスへと国を持たずに過ごす悲哀(彼の自由な表現はナチス支配下の祖国ドイツからは追われ、当時保守的な誕生の地スイスへの亡命を望みながらも、これもついに果たされることはなく60年の人生を閉じた。)のなか・・・。


 クレーは、自分の創作活動を丁寧に記録しています。このようなメモ(源泉)は、しだいに多くの美しい作品を生み出すことになります。この作品もそうですが、「色彩と線のみごとな調和」はクレー自身の『計算』によるものです。この音楽(ハーモニーやリズム)を感ずるような絵には、音符(記号)が隠されているのです。絵画でも音楽でも、何かを表現することは、思うほどたやすいことではありません。

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